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HP 『深紅世界』 についてのお知らせ

 
なくなってしまいました( ◠‿◠ )
びっくり、悲しみの境地

 
「深紅世界」を立ち上げた当初、かなり悪戦苦闘してホームページを
作ったのを思い出します。
 
まさかこんな形で終了してしまうとは。
 
悲しみの境地(二度目)
 
とりあえずほとんどの小説はパソコン様のなかに保存して
いましたので無事です。
 
アルファポリスさんでオリジナル小説の方は読めるようにして
いるので、そちらで楽しんでいただければと思います。
 
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/
238100141

 
オリジナル小説 アルファポリスにて継続中
リンクはこちらをクリックしてください。
 
ブログもどうなるかわかりませんので、それはまた考えてイアリキは
せっせとpixiv様の方に移動できればと思っているのですが、結構
量が多いことに気付き、停滞中…
 
一応、二次創作とオリジナル、両方読めるのではと思います。
 
近況や生死の方はまあ、ツイッターでもたまに生息しているので、
もし確認したいのであれば @mamamamura にて
検索ください。
 
いつも読んでくださっている方たち、
本当にありがとうございます(/・ω・)/ 
 
まむらはこれからもホモエロとともに、
生きて行く所存ですとも( ˘ω˘ )

 
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【更新履歴】誤字脱字、怪文章、受け流してください…

いらっしゃいませ。
 はじめにaboutをお読みください。( ◠‿◠ )


今後の予定… 2021/01/01
  2021年、今年もよろしくお願いします
   きっと良い一年になる、と信じて…
   まむらは生きていきますとも(/・ω・)/
   イアリキを日本に、世界に、地球に、届け!!( ◠‿◠ )
  
  ※HP出来ました※
   こちらではオリジナル小説も始めました(^w^)
   エロは当然のこと、SM、催眠、スカ、んほぉ!!、などなど…
   『深紅世界』へ↓banner.png
     http://maitakeya2nd.x.fc2.com/index.html
  
 更新記録…
【天使禁愛(二十二)最終話】 2019/07/21
   続き物⑤ 二十二話 更新しました
     ついに完結!!\(^o^)/
     イアリキには幸せになってもらいたい( ˘ω˘ )
 
【天使禁愛(二十一)】 2019/07/20
   続き物⑤ 二十一話 更新しました
     次で最終話です(/・ω・)/
 
【天使禁愛(二十)】 2019/07/15
   続き物⑤ 二十話 更新しました
     久しぶりの更新で\(^o^)/
     完結まであと少し…
 
【天使禁愛(十九)】 2019/01/13
   続き物⑤ 十九話 更新しました
     今年一発目の更新( ◠‿◠ )
     もう少しで完結する…!!
 

 

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天使禁愛(二十二)最終話

ユピテルは願った。
 
『わたしのこどもたちよ、怒りも悲しみも忘れ、幸せになりなさい…』
 
 
 
 
 
あれからどれくらい経っただろうか。
 
イアソンとリキは賑やかな街並みの中、二人で歩いていた。今日は二人とも休みの日で、久しぶりのデートとも言える時間を楽しんでいるのだ。
 
二人は人間として生まれ変わった。あの日の願いはどういうわけかこうして実現している。あれからどれくらいの日々を二人で過ごしているだろうか。もう両手では数えきれないほどだ。
 
あの日、命尽きる数時間前、イアソンとリキは静かな時を過ごしていた。
 
激しい逢瀬から目を覚ましたリキは気が付けば身を清められ、座るイアソンの中で包まれるようにして抱き締められていた。まるで全てのモノから守られるように、壊れ物を扱うようにしっかりとその腕の中にいた。
 
「…ん、イアソン…?」
「起きたか。気分はどうだ?」
「う、ん…、大丈夫…」
「そうか」
 
寝ぼけ眼でぼんやりとしているリキを見てフッとイアソンは微笑んだ。とても綺麗な笑顔だった。見惚れた様にじっとその表情w見ているリキに、イアソンは首を傾げている。
 
本当はとても疲れていた。やけに体が重く感じられ、息苦しさもあった。そうか、そろそろ死が迫っているということか、とリキは理解した。多分自分の寿命は思っていたよりも短かったのだろう。
 
そのためイアソンの寿命を分け与えられたとしても長くは持たなかったようだ。せっかく命を縮めてまでともに生きようとしてくれたのに、少しイアソンに申し訳ない気がした。でもそれがイアソンの願いであり、リキも受け入れた。だから後悔はしない。
 
「…イアソン、ユピテルから俺を連れてこいって言われてただろ、よかったのかよ」
「ふん、仕方あるまい」
「きっとユピテル怒ってるな。イアソンも俺もユピテルに迷惑かけて…」
「…ユピテルはきっと既に知っていたのだ。おまえとわたしの探しているものがこれだったことを」
「…うん」
 
そう言ってイアソンはリキを強く抱きしめた。
 
あと数時間もすればこの体は消滅することだろう。罪を犯した二人は楽園へ帰ることはなく、この地上で果ててゆくのだ。それも悪くない、とイアソンは言う。
 
「…何でそんなに嬉しそうなんだよ」
「嬉しそう…?そう見えるか?」
「ああ、俺には嬉しそうに見えるよ」
「そうか、嬉しそう、か…」
「イアソン?」
「ふっ…」
 
小さく笑うイアソンにリキは不思議そうに首を傾げた。二人して地上で心中するみたいなものなのに何が嬉しいのか。何も言わずに笑っているイアソンにリキは困ったように視線を空へと向けた。
 
空は青く澄み、鳥が気持ちよさそうに飛んでいる。自由だ。
 
自由を求めて、そして何かを探しにリキは堕天使となり地上へ下りた。人間とともに生活をし、不自由でありながらも自由に生きた数年間、リキは生きていた。
 
物思いに耽るリキに、イアソンは言う。
 
「地上での生活はおまえにとって楽しいものだったか?自由の利かない体、乗り物とやらでの移動、働くこと、何もかも天使だった頃にはないものだっただろう」
「…そうだな。でも、人間の生き方、俺は嫌いじゃない。体は不自由でも、心は自由だった。自由に動いて、自由に生きて、たまに喧嘩して、笑って」
「天使に戻れなくともおまえは自由を選んだ」
「それが俺の選択だったから後悔はしてない。イアソンとこうして死んでいくのも後悔はない。こうして自由に生きて、探し物が見つかって、幸せってのを実感してる」
「…そうか」
 
空を見つめるリキの顔色が少しずつ色を失っている。きっと苦しいのだろう。息遣いも荒くなってきている。手を上げることさえ辛いのかだらりと垂らしたまま動く気配がない。
 
イアソンの方もリキを抱き締めたままじっとしている。二人の命はもうすぐ尽きる。二人は見つめ合い、軽くキスを交わすだけ。それでもその瞬間が幸せだった。愛しい者と迎える最期の瞬間にこうして抱き合っていられるのなら、それ以上の喜びはない。
 
次第に呼吸が小さくなる、その時だった。二人の目の前に強い光が現れ、あまりの眩しさに目を閉じた。そして次に目を開けた時には見覚えのある場所にいた。リキが驚いたように一点を見つめ、口を開いた。
 
「ユピテル…っ」
「…ここは…」
 
いつの間にか二人は楽園にあるユピテルの部屋にいた。ガラス窓から見える景色は記憶の中と同じだった。美しい空と自然、下を見れば天使たちが飛び回り、遊んでいる。何年も前に見た最後の景色と一つも変わらない光景。
 
確かに自分たちは地上にいたはず。しかしここはどうみても楽園だった。そして今いる場所はユピテルの部屋、楽園の全てが見渡せる最上の部屋だった。そして正面にはユピテルがこちらをじっと見つめている。
 
「ユピテル、どうして、ここは…」
 
驚きのあまり言葉が思い浮かばずリキは戸惑うようにユピテルを見る。その隣でイアソンは静かに口を開いた。
 
「わたしたちは罪を犯した。同性愛と約束の放棄、その他いくつもの罪を犯した。だが後悔はしていない。もう幾ばくも無い命ではあるが、裁きたければ裁くがいい。…罰は甘んじて受けるつもりだが、できることならこのまま二人で静かに逝かせてほしい…」
「イアソン…」
 
もはや抗う気力も体力もない。イアソンはリキを強く抱きしめたままユピテルを見上げた。そしてリキも、苦しそうに呼吸をしながらもしっかりとユピテルの姿を見つめている。
 
そんな二人の姿をじっと眺めたままユピテルは動かない。少しして、のんびりとした動作で視線を窓の外へとやり空を眺め、そして再び二人を見た。
 
そしておもむろに、ユピテルは音もなくスーッと二人のもとへやってくると大きく両手を広げた。そこから光のカーテンが現れ、部屋全体を包み込むように光が溢れ出す。とても幻想的な光景だった。
 
自分たちは今、光の中にいる。
 
『…わたしの愛しいこどもたちよ、見つけたのだな。リキよ、やっとわたしのもとへときてくれた。愛しいわたしのこども』
 
頭の中に直接語り掛ける声がした。これはユピテルの声だ。人でも機械でもなく、不思議な音としてユピテルの言葉が頭の中に響いてくる。とても温かな音だった。
 
「…ユピテル…」
 
イアソンに抱かれたまま、リキは必死にユピテルの姿を見た。大きくて綺麗で、優しいユピテル。堕天使となった後もユピテルは誰一人として忘れることなく最期の瞬間まで見守り続けていた。
 
そんなユピテルを見ながら、リキは悲しそうな顔で口を開く。
 
「見つけた、…見つけたよ。俺の探したかったもの、やっと見つけた。でも、ごめん、あんたの大切にしてた奴ら…、ガイも、キリエも、みんな死んだ。俺に関わった奴らも罰を受けなくちゃいけないんだろ?キャルもダリルも、…イアソンも」
「わたしは後悔していない。おまえとともに逝く、それが願いだ」
「イアソン…」
 
少しの後悔もなかったわけではない。自分に関わった者、イアソンに関わた者、地上にいるカッツェ、きっと皆に罰が下るだろう。楽園の天使は決して地上に関わってはいけないのだ。
 
そんなリキの様子にユピテルはフッと笑った気がした。そして再び頭の中に声が響く。
 
『わたしは視ていた、感じていた、そして願った。わたしのこどもたちよ、幸せになりなさい。そしてわたしにその先がどんなものになるのかをみせてほしい』
 
「…?」
「ユピテル、何を…っ」
 
イアソンが問いかけようとした時、ユピテルから光が溢れ出した。その光があまりにも眩しくて、二人は目を閉じた。そして次に目を開いた時には既にイアソンとリキはあの場所ではなく、もといた場所へと戻っていた。
 
 
 
 
 
カーテンの隙間から溢れる光で目を覚ましたリキはベッドから下り、グッと背伸びをした。そのままゆったりと歩きカーテンをザアアッと開けると窓の向こうには青空が広がっている。
 
後ろを振り向き、リキはベッドに向かって口を開いた。
 
「イアソン、朝だ、起きろ!!」
 
リキの眠っていた隣にはイアソンが未だに眠っていた。眩しいのか眉間に皺を寄せて未だに目を開こうとしない。リキは呆れた様にため息を吐きながらイアソンの眠る近くに来てそのまま座った。
 
ギシッ、と軽くキングサイズのベッドが軋み、イアソンの体が少し揺れる。
 
「おい、起きろって。今日は会議があるから起こせって言ったのアンタだろ?いい加減起きろよっ」
「………起きる…」
「目閉じたまま何言ってんだよ、…ったく。…アンタがこんなに寝汚ねぇって思わなかったぜ。いつも澄ました顔でツンツンしてたけど実際はこんなに…、うわっ、…何すんだよっ」
「起きると言っているだろう、リキ」
「イアソン!!」
 
眠っていたイアソンは突然、ブツブツ言い続けるリキを無理やり引っ張った。リキはその勢いによってイアソンの胸元にダイブすることとなった。大きくベッドが揺れる。
 
リキはイアソンをジロッと見ながら口を開いた。
 
「早く支度しろって」
「わかっている」
「…何だよ」
「…ふっ、何でもない」
 
ムッとしているリキを見てイアソンは少し楽しそうだ。ようやく目を覚ましたイアソンにリキは呆れた様に起き上がる。地面に足をつけるとそのまま歩き出し寝室のドアを開く。朝食の準備をするためにキッチンへと行くのだ。
 
そんな後姿を眺めながらイアソンはまた小さく笑った。ふと窓の外を眺め呟く。
 
「まさかこんな日が来ようとは…、面白いものだ」
 
そう言うとイアソンはゆったりと起き上がり歩き出した。目的地はリキのいるであろうキッチン。リキがイアソンを起こし、朝食を作る。後から来たイアソンに少しだけ小言を言いながらもしっかりと朝食の準備をしているリキ。これが毎朝の光景である。
 
全てはユピテルからのギフト。息絶えるはずの命をつなぎ止め、新たな生き方を提示された。
 
そこにあるのは未来であり、選択だった。天使ではなく魔族でもなく、ましてや堕天使でもない新たな生き方。人として生きることが自分たちの新たな道であった。
 
地上で生きることは不自由なことも多い。しかし、毎日のように生まれる新たな驚きと幸せはとても美しく楽しい。
 
「早く食っちまえって。もう少しでカッツェが迎えに来る時間だろ。俺だってその後すぐ出ねぇといけねぇんだって」
「今日は仕事日だったか?」
「ああ、隣の地区に荷物運ぶんだ。その後もう一件。まぁ、アンタよりは早く帰ると思うけどな」
「そうか」
 
何気ない会話をしながら流れる時間。とても静かだった。
 
驚いたことに二人は人間となり、地上で生活している。時間になれば食事をし、眠り、働いている。イアソンはモデルであり、経営者でもある。そしてリキは配達屋だ。
 
しばらくすると玄関からチャイムが鳴り、ドアをノックする音がする。きっとカッツェがイアソンを迎えに来たのだろう。カッツェはイアソンが経営する会社で専属の運転手をしている。そして裏方の重役でもある。いつも仕事の日はこうしてイアソンを迎えに来ているらしい。
 
「ほら、迎えが来ただろっ、早く行けって」
「…そういえば、ラウールがまたおまえをスカウトしたいと言っていた。いつも通り断ったが」
「あん?…ったく、俺はモデルなんて柄じゃないって言ってるのに…。何度誘われても断っとけよ?俺はそういうのしたくねぇし」
「わかっている。わたしも反対だ。おまえを独り占めできなくなる」
「…何だよ、それ」
「行ってくる。…帰りは深夜だ」
「ああ、気をつけてな」
 
渋々といった様子でイアソンは出ていった。いつものことだが何故こうも家を出るのを渋っているのかリキにはわからない。その表情が何となく面白いというのはリキだけが知っている。それが嬉しい。
 
ハッとしたようにリキが時計を見た。そろそろ自分も家を出なくてはならない。その前に、とリキは電話を手に取り番号を押す。数回のコールで相手は出た。
 
「はい、こちら…」
「俺だ」
「あ、リキ様ですか。今日はどうしましたか?」
「ちょっと手伝ってくれ。今日の荷物は一人で運ぶにはちょっと手間がかかりそうなんだよ」
「わかりました!!ではすぐに行きます!!場所はいつものところで?」
「ああ。…あ、キャルと一緒に来るか?」
「はい、もちろんです」
「ん、じゃぁ頼むな」
「了解です、ではまた」
 
会話はすぐに終わった。忙しい時はいつもこうしてダリルとキャルに手伝ってもらっている。
 
あの二人はラウールの事務所の従業員であるとともにイアソンの経営する会社の手伝いも少ししている。そしてリキの助手にもなっている。つまりは何でも屋みたいなものだ。
 
リキはバイクにまたがりエンジンをかけた。少し走った時、擦れ違い様にハッとしたようにブレーキをかけて後ろを振り向いた。その先に仲良く歩く二人の後姿があった。少し会話が聞こえてくる。
 
「明日は一緒にどっか出かけようよ、久しぶりに休暇が合うんだし」
「どこにいきたいんだ?」
「俺の行きたいとこでいい?」
「たまには聞いてやるよ」
「ありがとう、ガイ!!」
「こんなところで大声出すなよ、キリエ」
 
驚いたようにそんな二人の後姿を眺めていたリキ。しかし二人の姿が見えなくなった時、リキはまたハッとして前を向いた。軽くフッと笑い小さく呟くと再び手をアクセルにかけた。
 
「…ユピテル、あいつらも幸せそうだよ…」
 
そう言ってバイクを走らせる。軽快なアクセル音を響かせリキは去っていった。
 
 
 
 
 
ユピテルの願いはこどもたちの幸せであった。いつか愛というものを知り、未来を生きていくこどもたち。
 
幸せになりなさい、わたしはいつも空から見守っている。
 
この広い世界に生きる全ての者たちよ、どうか幸せに。

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天使禁愛(二十一)

それは一瞬の出来事だった。何かを言う前に全ては終わった。
 
気が付けばガイの心臓はイアソンの手の中にあった。躊躇わず、一瞬の隙も与えることなくイアソンはガイの心臓を貫き抉った。どちらが魔族かわからぬほどの残忍さでイアソンはガイを殺したのだ。
 
イアソンは貫いた腕を心臓ごと抜き出し、未だにビクビクと動いているそれを地面へと投げ捨てた。その血みどろの塊は地面に叩きつけられ、ビチャリと音を立てて形を崩しながら動きを止める。
 
そしてガイの腕から力が抜け、リキの体はフラリと倒れた。しかし地面へ叩きつけられる寸前でその体はイアソンの手によって防がれた。
 
「イアソン…、……イアソン…」
「…ああ、わたしだ。ずっと会いたかった、リキ…」
「……っ…」
 
イアソンはそっと地面に膝をつき、ぐったりとしているリキを両手で抱き寄せた。衰弱した体は痩せ細り、少しでも力を入れてしまえば今にも折れてしまいそうだった。寒そうに震えている体に目を細め、イアソンは自分の来ていた上着をそっとリキに被せる。
 
しばらくの間、二人は見つめ合い、どちらかが口を開こうとした瞬間、背後から小さな呻き声が聞こえた。イアソンは鋭い視線を向け、リキは緊張したように体を強張らせた。
 
振り向き見たそれは、心臓を失ったにもかかわらず這いながらも未だにリキへと向かってこようとするガイの姿だった。ガリガリと爪で地面を削りながらもその視線の先にはイアソンの腕の中のリキに向けられていた。
 
ゴフッと大量の血を吐き、それでもガイはじわじわとこちらへ血の跡を残しながらやってきている。それはもう執念としか言いようがなく、未練がましくもリキへの感情がこの世へと命を繋げているのだろう。

「…ぐううううぅっ!! …リ、ギ…っ、…リ゛ィギィィィ…ッ!!」
「ガイッ…」
「………」
 
呻くようにリキの名を叫び続けるガイの姿はもうドス黒く、今にも消滅しそうだった。その姿にリキの体はますます強張り、しかし表情はとても辛そうにガイを見ていた。イアソンは何も言うことなく、リキの体を抱き締めたままガイに視線を送る。
 
きっとそのまま放っておけば、いずれは完全に消滅することだろう。しばらく二人はその様子を見ていた。少しして、リキは力強い視線をイアソンに向け、そして口を開いた。
 
「…ごめん、イアソン。俺をガイのそばまで連れてって」
「……」
 
イアソンはその言葉を予想していたのか、黙ってリキを抱え上げると静かにガイのもとへと歩き出した。
 
呻き続けるガイの近くにリキをそっと地面へ下ろし、数歩ほど離れる。もうガイにはリキをどうこうする力は残っておらず、ただ呻くだけの力しかないためイアソンは何も言わずにリキを見守っていた。
 
「…ガイ、おれがリキだってわかるか?まだ意識があるなら聞いてくれ」
「リ、…キ………ッ…」
 
目の前から聞こえたリキの声に、ガイはぼやけた視界でその声のする方へと顔を向けた。リキはそっとガイの顔に触れ、静かに口を開いた。
 
「ガイ、ごめん。俺、きっとこの先もガイのこと愛してやることは出来ない。友情と愛情って似てるけど違うんだ。ガイにとっての愛情は俺にとっては友情でしかなくて、それ以上にはなれない、絶対に」
「……」
「楽園にいた時ずっと考えてた。愛やら恋やら周りのみんなはどんどんそういう気持ちを知っていくのに、どうしても俺にはそういう感情が生まれてこなくて。仲間ができて、何となく楽しくは過ごしていたんだと思う。でも、心のどこかにはいつも何かが足りなかった。やっぱりそれってそういう感情が俺には欠落してるのかなって考えてて。
そんなこと考えてる最中にお前が俺に…。気が付いたらユピテルが心配そうな顔でベッドで横になってる俺の顔見てた。一方的だったけど、あれがあって初めて俺は自分の気持ちを、愛ってのを探そうと決意できたのかもしれない。あの時の俺に向けられたガイの激情が何だったのかが理解できたのはこんな姿になってからだけど…
だからユピテルに頼んで堕天した。俺の居場所は楽園じゃないみたいだって、我が侭言って…」
 
そう語るリキの目からはポロポロと涙が零れていた。ガイは大人しくリキの言葉に耳を傾けている。
 
「キリエの消滅する姿を見ながら思ったんだ。ガイもキリエみたいに傷ついてたんだなって。傷つけて、ごめん。でも、でも俺が愛情を向けるのはただ一人、イアソンだけだ。こんなに切なくて、苦しくて胸が締め付けられる気持ちになったのはイアソンだけ。これが愛やら恋ってやつなんだって解った。俺、イアソンを愛してるんだ…、だから…ガイ…」
 
何て残酷な言葉なのだろうと思った。消えゆく命に向かって告げる言葉は全てガイへの否定の気持ちだった。それでもガイにははっきりと言わなくてはいけない。そうしなければガイの心は消滅した後も悲しみと怒りを纏い続けるだろうと思ってしまったのだ。
 
涙を流しながら真剣に話し続けるリキに、ガイの心がスッと静まる気がした。すると何故かドス黒く染まった体がスーッと本来の色を取り戻し、楽園にいた頃のような肌色へと戻った。
 
力なく横たわった体はそのままに、ガイの目はリキへと向けられた。その視線はどことなく優しく、とても静かで。
 
「リキ…」
「ガイ!!体が…っ」
 
ガイの体は足元からサラサラと砂になり始めていた。とても綺麗な色の砂は風になびき、風とともに散っていく。リキは焦ったようにガイの顔を見つめ、何を言えばいいのかわからず口を閉じたり開いたりしている。
 
「…俺の一方通行な感情だったんだ。その感情を無理やり押し付けて、お前を傷付けた。悪かった…許してくれ…」
「ガイ…?」
「キリエの気持ち、ようやくわかったよ。キリエも俺も勝手に愛して勝手に失恋しただけなんだ。リキ、お前は何も悪くなかったのに、俺が一方的にお前を…」
「ガイ…」
「感情を言葉にするのは何よりも難しいもんだな…、俺もお前も、キリエも、……あんたも、な…」
「……ガイ?」
 
苦しそうに笑いながらガイはイアソンを見た。一瞬視線を向け、反応することなくイアソンはすぐに視線を逸らし、どこか遠くを見つめていた。リキはわかっていないのか不思議そうにイアソンを見ていたが、ガイの体がとうとう消滅することを感じガイの目をじっとみている。
 
「リキ、愛とか恋ってやつは、どうしてこうも辛くて、悲しくて、熱いんだろうなぁ…」
 
そう言ってガイは消滅していった。最後の言葉はとても胸に響くものだった。辛くて悲しくて熱い、それが激情というものなのだろう。たった一人の誰かに注ぐ感情こそが愛や恋であり、リキの探したかったもの。それはとても言葉では言いあらわせないほどのものであった。
 
「…そう、だな。でも、俺はそれがどうしても探したかったんだ。全てを手放してでも…」
 
そのたった一つのためだけに必死に生きてみた。その結果はこんな無様な姿になってからだけど、どうにか見つかったんだ。一瞬でもいい、それを見つけられるのなら、この命は短くとも。
 
風邪に乗って消えてゆくガイの残骸を見つめ続けるリキの体をイアソンは背後からそっと抱き締めた。回された腕にリキは何も言わずそっと触れた。
 
「何で俺たちはこんなに面倒な生き方しかできないんだろうな…」
「…それがわたしたちだからだ。器用には生きてゆけぬ、そういうものだから仕方ない」
「う、ん…」
「……辛いか…?」
「少し…」
「…」
 
リキの命が尽きようとしていた。
 
 
 
 
 
きっと自分はそうすることを決めていた。
 
イアソンの言葉にリキは驚いたように目を開いた。そして抵抗しようとイアソンの腕の中でもがいている。
 
「それは駄目だ…っ、それじゃぁ、あんたの命も…っ」
「決めていたのだ。おまえがどう言おうがこれはわたしの意思、誰にも止めさせはしない。だからリキ、素直にわたしの言う通りにしろ」
「でも、でも…っ」
「わたしの寿命を使いおまえの命を長らえる。だがそれも持って数日のこと。それを良しとしたのはわたしだ。そうすることで少しでもわたしはおまえとともに過ごしたい、そう思ったのだ」
 
つまり、イアソンは禁忌を犯そうとしている。天使が堕天使となった者と情を交わすということはつまり、罪である。リキはどうにかイアソンの行動を止めようと必死に抵抗したが、イアソンの意思は固いようだ。
 
「イアソン!!」
「…リキ。わたしの心にもおまえのように欠けているものがあった。それはおまえと同じものだったようだ。そしてそれが今、尽きようとしている。それを黙って見ていろと言うのか?もしおまえがわたしの立場であったならば、同じことをするだろう」
「イアソン…」
「わたしの激情はリキだ。リキがいなければわたしはもう生きてゆけぬ。天使でなくなるというならそれでいい。堕天しようが構わない。ともに命尽きるならばそれがいい。それに、わたしとおまえがどういう関係か、きっとユピテルは既に知っているだろう…」
「そんな…」
 
ユピテルとは創造主であり、全てを知る存在である。きっとリキとイアソンの心はもうユピテルにはわかっているはずだ。何もかも知った上で静観しているのだろう。
 
「もう、抵抗しないでくれ。わたしを受け入れ、心を、気持ちを、わたしに…」
「…イアソン……、……ああ、わかった。……イアソン、俺、あんたが好きだ、愛してる…。これが俺の心からの気持ち。もう抵抗しない、俺の全部、あんたにあげるよ。だから…、そんな顔するなよ…」
「リキ…っ、リキ、愛している、心から、愛している…」
「うん…、俺も…」
 
あまりにもイアソンが辛そうな表情で愛していると囁くから、切なそうに言うものだから、リキはとうとう観念したように頷いた。もうこの気持ちに嘘はつかない、抵抗しない、隠さない。
 
静かに笑うリキに、イアソンの胸はドクリと弾んだ。
 
「…んぅっ…」
 
二人は激しい口付けを交わし、リキの体がビクリと震えた。何度も何度も角度を変えながら、息次ぐ暇もなくイアソンはリキの口内を犯す。
 
リキの体は限界だと訴えるようにガクガクと痙攣し、今にも気をやりそうなほどに硬直している。とうとうリキはビクリと大きく震え、激しいオーガズムを迎えた。柔らかなままのペニスからは精液がトロトロと滴り、ようやく離された唇が開けば、時折小さく悲鳴のような声を上げている。
 
「ひぅっ…、……ぁひっ、…んっ……」
「リキ、平気か?」
「…ううっ、…ぁっ、…んっ、…うんっ…、…んっ…」
「…ゆっくりする、怖がるな…」
 
あまりにも大きすぎる快感にリキは怖がり、震えながら涙を零した。それでも体はイアソンを誘うように勝手にカクカクと動いている。それが恥ずかしくてリキは赤面しながら顔を反らした。
 
先程掛けられたイアソンの上着を敷布にしてそっとリキは仰向けに寝かされた。そこにイアソンは覆いかぶさりリキの全身を愛撫していく。
 
「あっ…はぁっ、んっ……、あっ…あっ……」
「リキ…リキ……」
 
何度も軽くイキ続けているリキの意識は既に朦朧とし始めていた。全身が蕩けてしまったかのように力は入らず、リキには甘い悲鳴を上げることしか出来ない。
 
イアソンはそんなリキの様子を見ながらそっと震える両足を開いてやった。肛門がヒクヒクと勝手に動き、トロリと体液が滴る様子に興奮したイアソンのペニスは硬くなってゆく。
 
ヌチュッと音を立てながらイアソンのペニスの先がリキの震える穴へとゆっくり入っていく。
 
「あ、はぁっ…っ…」
「…っ」
 
ピュルッ、ピュッ、ピュッ……
 
リキのペニスからは精液が壊れた様に少量ずつ噴き続けている。辛そうな表情で、それでもリキは幸せそうにイアソンのペニスを受け入れている。
 
オーガズムを迎える度にリキの穴はギュッギュッと締まり、次第にイアソンも限界を迎えようとしていた。
 
「…っ、リキ……」
「あ、あ、あっ、…んはあああっ!!………あぅううううっ、…んううっ!!」
 
イアソンの射精によってリキの体が激しいオーガズムに襲われた。何度も痙攣し、絶頂し、射精した。イクのが止まらない。壊れた蛇口のようにリキのペニスからほとんど透明になった精液が噴射し続けている。
 
狂ったように頭を振り乱し、リキは止まらない絶頂に喘いでいる。イアソンのペニスは一度射精した程度では収まらず、またすぐに勃起し始める。ゆっくりだった動きは激しくなり、絶頂の度にリキの腰が少しずつググッと上がっていく。
 
常に萎えているリキのペニスからは既に精液は出なくなり、気が付けばショロッショロッと控え目な潮吹きが始まっていた。プルプルと震える方向に潮は噴き、それに気付く様子のないリキは惚けた様に顔を蕩けさせている。
 
「あうううぅ…っ、んふぅぅぅ…っ…、はあぁぁぁ…っ、……………あっ…、あっ…、あっ…、あ…っ、…んはぁぁぁっ…、…っ…、……っ…」
「…っ…」
 
ガクガクとリキの痙攣が細かく激しくなり上がっていた腰から力が抜け、ガクッと力が抜けた。リキの最奥へとイアソンのペニスが突き抜け、それと同時にイアソンは射精した。精液が奥深くへと勢いよく流れた。
 
その感覚に反射するように、リキは一度激しく腰をバウンドさせるとズルッと穴からペニスが抜けた衝撃によって思い切り絶頂した。そして次の瞬間には変に力の入った体が失禁を始めてしまう。
 
ショワァァァー………
 
放尿の感覚さえ快感となるようで、リキは全身を痙攣させながら気持ちよさそうに息を吐き出した。
 
「…んあ、はぅぅぅ………」
「………リキ…?」
「…ん……っ……」
「眠ったか…」
 
リキはそのまま失神して意識を落としてしまったようだ。頬を赤く染めたままリキは小さく痙攣している。しばらくは目を覚まさないだろう。
 
「…持って数日、というところか…。ふっ…、こういう最期は考えていなかったが、悪くない、な」
 
今、この瞬間からイアソンの寿命はリキへと分けられた。しかしリキの寿命は実際のところ、既に尽きているはずだった。未だにリキが生きているということは奇跡に近く、本来であれば既に息絶えていてもおかしくはないはずだったが、何かの作用によって長らえていたのかもしれない。そのためにイアソンの寿命がいくら長かろうとも二人とも持って数日という結果になったようだ。
 
最期の時を二人で迎えられるのならばそれはきっと幸せに違いない。
 
(わたしも疲れたようだ、少しだけ眠ろう…)
 
自身も力を使い果たし、寿命も尽きようとしている。その前に少しだけ眠り、最期はリキと語り合いながら死んでゆきたい。そう思いながらイアソンはリキの隣へと横になり目を閉じたのだった。
 
別れの時が近づいている。

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天使禁愛(二十)

死んだ、と思った。
 
キリエに心臓を貫かれ、リキは自分が死んだと思い目を閉じた。しかし貫かれたはずの体は痛みを感じない。だが確かに鼻を衝く濃厚な血の香りがするのだ。だが、これは…
 
リキは恐る恐る目を開いた。確かに目の前にはキリエがいた。必死の形相でこの心臓を貫かんとする爪を立てたまま。
 
「………、ガ、イ…」
 
目の前にはキリエがいる。そしてその背後には、ガイがいた。怒り狂った鬼のような顔でキリエの背後にいるガイが。リキの視線はガイから再びキリエへと向けられた。視線は少しずつ下へと下がりそれを見た瞬間、リキの体は硬直した。
 
「…っ、…キリエ…っ」
「…ガハァッ……、グッ、…ウグッ……」
 
キリエの爪はリキの心臓を突き抜ける直前で止まっていた。そして代わりにキリエの心臓が背後にいたガイの鋭い爪によって貫かれていたのだ。
 
口から血を吐き出し苦しむキリエに、リキは目を見開いたまま何も言えず体はピクリとも動けなくなってしまった。命が尽きようとするキリエの視線は未だにリキに向かい、その目には殺気も込められている。
 
死を目前にしてもキリエの嫉妬心はリキへと向けられたまま。ズポッとガイはキリエの体から爪を引き抜き、ビシャッと手を振り払い絡みついた血を地面へと散らした。
 
リキは何かを叫ぼうにも全身が緊張して口も動かない。するとキリエの背後にいたガイが静かな声で冷たく言葉を放った。
 
「キリエ、何故おまえはこれに執着した?俺から獲物を奪ってまで執着する理由がわからない。おまえはいつでも何も欲しがらず何ものにも執着しなかったが、これにだけは興味を示した」
「…っ、…ゲフッ……、…フッ、…フハッ………ハハハッ……」
「………何を笑っている?」
「ハハッ…ッ、…ウグッ…、……滑稽、すぎて……」
「滑稽、だと…?」
 
ガイからキリエに向けられた疑問に、キリエは血を吐きながら笑った。
 
殺意も嫉妬も消えた。そして虚しさだけがキリエの心の中に残った。ただただ虚しいだけだった。ガイの口から執着という言葉が出るなどとは思っていなかったのだ。自分が一番執着しているくせに、キリエの執着がまるで異常なことのように言うのだから笑うしかない。
 
憑き物が消えたようにキリエは笑い、後ろを振り向いてガイの顔を見た。
 
「…ガイ…、……執着、してるのはっ………あんたも、同じ、だよ……っ」
「何だと?」
「馬鹿、みたいっ、だっ……、…何も、かもっ……ガハッ…」
「おい、キリエ、一体どういう…」
 
そっとキリエはガイの頬に手を伸ばした。嬉しそうに笑ってキリエはガイの頬を撫でる。それは昔、楽園で見たあの頃のキリエの表情と同じだった。あなたに恋をしていますと言うように頬を赤くして必死にガイに話しかける、あの頃のキリエのような。
 
次第にキリエの視界は歪み出し、命の灯は消えようとしていた。あまりにも嬉しそうに笑うキリエに、ガイは戸惑い不思議そうな顔で口を閉ざしている。
 
それを見て一層笑みを深くしたキリエがか細い声でガイに話かける。
 
「…グッ……、…なぁ、ガイ…っ、…おれ、……今も、…むかし、も…っ、…アンタのこ、と、…好き、だった…よ………」
「な、にを…」
「こんど、…もし、あえたら……、……おれを、…あい、して、ね………」
「……っ」
 
キリエは震える手でガイの頬を寄せ、そっと唇にキスをした。ガイはそのキリエの言葉に驚いて動きを止めた。唇が離れ、再び視界に入れたキリエの顔はとても満足そうに微笑み、涙を流していた。
 
そしてキリエの命は尽きた。リキとガイの目の前でキリエの体が石のように硬くなり、サラサラと砂のように地面へと流れていくのを見ながら、リキは苦しそうな表情をしてキリエの体が消滅するのを見つめていた。
 
完全にキリエがいなくなり、しばらくの沈黙の後、ガイは口を開いた。
 
「…楽園でいつも楽しそうに笑って呑気な奴だと思っていたが、キリエ、馬鹿な奴だ…」
「…っ、ガイッ、記憶が…っ」
 
地面へ流れた砂を一掴みしたガイは呟くようにそう言い、握っていた手を開き、その砂を風に乗せてにサラサラと散らした。キリエの最後に残した愛の言葉はガイの記憶を蘇らせたらしい。
 
砂さえも風と共に消え、ガイは吹っ切れたようにリキへと顔を向けた。
 
「キリエの感情はキリエのものであり、俺の感情は今も昔もキリエには向かわない」
「ガイ!!」
 
全てを思い出したガイはそう言ってリキの体を抱き寄せた。
 
「俺が欲しかったのはリキ、お前の心だった。お前の感情がどこにも向いていないのはわかっていた。でも、それでも俺はお前が好きだった。記憶を取り戻した今、お前への思いはそれ以上に膨れ続けている」
「ガイ、おれは…っ」
「…リキ、俺に心を開いてくれ。俺は………、っ!?」
 
リキがガイの腕から逃れようと身を捩った瞬間、ガイの体がギクリと強張った。表情を覗けばやけに緊張したように眉間に皺を寄せ、辺りの気配を窺うように神経を集中させている。
 
次の瞬間だった。
 
ドオオオオンッ!!と近くで雷が落ち、その雷が落ちた中央からこちらへと近づく人影が見えた。次第にその人影が姿を現した時、リキの心臓は弾むように動き出したのだ。
 
その姿はとても美しく、綺麗な黄金の髪に白い翼を持った長身の男、イアソンだった。リキは彼に向って叫んだ。
 
「イアソン!!」
 
ずっと会いたかった。会いたくて仕方なかった。イアソン、イアソンが目の前にいる。リキの体は未だにガイに捕まれたまま抜け出すこともできなかったが、それでも必死にイアソンの名を叫んでいる。
 
ガイは突然のイアソンの登場とリキの叫び声に苛立ちを覚えた。何故こうも苛立つのか。だが記憶を取り戻し、今の状況になってその正体がようやくわかった。
 
これがキリエの言っていた嫉妬という感情だったのだ。キリエがリキへと嫉妬するように、ガイはイアソンへ嫉妬したのだ。
 
リキの心が自分へと向かずに、突然現れたイアソンへと向いてしまったことでイアソンに嫉妬してしまった。リキの心を知り、どうにもできない感情が溢れ、それによってリキへの執着は加速したのだ。
 
どうすることもできない思いほど心は荒み、気付けばキリエのように壊れてしまう。
 
欲しい、欲しい、欲しい。リキの全てが欲しい。ガイにはその感情だけしか残っていない。リキを犯して無理矢理にでも手に入れようとしたリキの心は全てイアソンに取られてしまった。
 
ガイの中で様々な感情が自分でも制御できないほどのスピードで渦巻き始めた。

「イアソン、お前を殺す」
「ガイ!!」
「リキは俺のものだ。誰にも渡さない。誰にも…」
「ガイ、…俺は…っ」
 
リキを抱くガイの腕の力が強まり、リキは苦しそうに小さく喘いだ。そんなリキを目にしてイアソンは鋭い視線をガイに送った。ゆっくりと二人に近付きながらイアソンは口を開く。
 
「ガイ、決してリキはおまえのものはならん。リキの心はリキのものであり、おまえのものではない。感情とはそういうものだ。いくら欲しがっても手に入らないものはある。無理矢理手に入れようとするのは強奪であり、罪なのだ」
「黙れ!!何が罪だ!!欲しがることが罪ならお前の感情は何だ!?俺もお前も欲しいものは同じだろう!!ならばお前の罪も同じだ!!」
「………罪、か。そうだ、それも罪と言えよう。だが、リキの感情がわたしのものと同じであれば果たしてそれは罪であると言えるか?少なくともお互いがそうであれば罪にはなるまい」
「……黙れぇぇぇlっ!!」
「うぐっ…」
「リキ!!」
 
イアソンの言葉に激怒したガイはその怒りに任せてリキの体を抱く力を更に強くした。苦しそうに呻くリキにイアソンのこめかみがピクリと動いた。
 
改めて見るリキの姿はボロボロだった。衣服は裂かれ痩せた体が隙間から覗いているし、殴られた場所は変色している。目元は涙で赤く腫れ、唇も切れていた。痛々しい姿にイアソンの心臓がドクリと跳ねあがる。
 
「リキを放してもらおう」
「放さない!!放すわけがない!!」
「イアソンっ…」
 
リキが腕を伸ばすがイアソンには全く届かない。その必死な姿にガイの感情が爆発した。イアソンの見ている前で犯してやろうかと考えるほどに、今のガイには記憶が戻っているとしても暴走は止まらない。
 
リキの喉元に爪を立て喰い込ませた。皮膚が裂け、ツーッと血が滴る。痛みに歪んだリキの表情にイアソンの脳内でプツプツと血管が切れていく音がする。
 
「これ以上近付けばリキが死ぬことになるぞ!!」
「リキを放せ」
「煩い!!そこから動くな!!今からお前の目の前でリキを犯してやる!!動けばリキを殺す!!」
「…っ!!」
「やっ…やめっ、……っ」
 
そう叫び、ガイはリキを覆う服を再び引き裂き剥がしてしまった。一糸纏わぬ姿となったリキの痩せた体を見せびらかすようにガイは狂ったように笑いながら無理矢理リキをイアソンの方へと向けた。
 
抵抗して嫌がるリキにガイはそのまま手をゆっくりと震える中心へと下ろしていく。
 
そっと触れたリキのペニスは勃起こそしないものの、最期の時に向けてトロトロと精液を零している。耳に舌を入れられ、もう片方の手で乳首を弄られれば全身から力が抜け、忘れかけていた快楽を呼び起こしていく。
 
「いやっ…、あっ…、…や…、やめて…っ」
「嫌と言いながらも感じているぞ、この体は!!」
「ひっ…、ひんっ……、ひぃっ……」
「はははははっ!!見ろ、見てみろ!!俺の腕の中で蕩けていくリキの姿を!!」
 
嫌だ、止めてくれ、と弱々しく抵抗するだけのリキを笑いながら犯していくガイ。次第にイアソンの表情は殺気がこもり始める。それに気付くこともなくリキの体は厭らしく乱れてゆく。
 
どうすることも出来ずガイにされるがままイアソンにこのような醜態を晒し、リキの心には悲しみが溢れ出した。唇を噛み、歯を食い縛っていたリキの目から、とうとうポロッと涙が零れた。
 
「…ふっ、…くっ、……イアソン…、…っ」
「………」
 
ブツッ!!
 
頭の中で血管が切れた音がした。
 
怒りで目の前が赤く染まり、心臓がドクリドクリと早鐘を打つ。これ以上はもう限界だった。いくら魔族と堕天使との行為であってもこれ以上は許せなった。
 
イアソンの周囲に複数の竜巻が起こり、木々の葉が大きく揺れ動く。上空から雷の音が鳴り始め、全身からブワリと殺気が溢れ出す。
 
「ほら見ろ!!お前も俺と同じだ!!イアソン、お前は俺に嫉妬したんだ!!リキと俺の姿を見てお前は俺に嫉妬した!!天使がこんな感情見せていいのか!?リキはおれのものだ!!誰にも渡さない、おれのものなんだ!!」
「それ以上喋るな。リキを解放しろ」
「近付くな!!これ以上近付くと本気でリキを殺す!!」
「嫉妬だと?そのような感情でわたしが怒るとでも思うのか?リキを愛しているのであれば今のおまえの言動は間違っている。おまえのそれはただの嫉妬と執着だ。そこに愛など一つもない。あるのは自分勝手に感情を押し付けるだけの醜く歪んだ心だけだ」
「違う!!俺とリキの間には愛がある!!だからこうしてリキは大人しく俺に抱かれているんだ!!」
「ふざけるな!!…それが愛だというなら何故リキはこれほど悲しみに満ちた表情で泣いている?必死に逃げようとしている?…これ以上リキを傷付けるのであればもう容赦はしない。…今、この場で、貴様を消滅させる」
 
イアソンは静かに怒っている。激怒している。しかし感情のまま動けばそこのガイと同じになる。冷静になれと自分に言い聞かせ、リキの開放をガイに訴える。
 
しかしもうガイには理性というものは残っていない。感情のままに行動し、感情のままに殺そうとする一匹の魔族がいるだけなのだ。記憶を取り戻してもその本質は魔族であり、昔のようなガイには戻れない。
 
突然ガイは狂ったように笑い、イアソンへ向かって叫んだ。
 
「出来るならやってみろ!!俺の腕の中にはリキがいるんだ、攻撃何てできやしない!!リキを犯したあとお前を殺して俺は全てを手に入れるんだ!!はははははっ!!」
「…おまえは何もかも手に入れることなく死ぬ。それがおまえの運命であり、罪の代償だ」
 
ポツリと呟き、イアソンは意識を集中させた。そして次の瞬間、まるで瞬間移動のような速さでガイの背後にイアソンが現れた。気付いたガイが後ろを振り向いたが、もう遅かった。
 
決着は驚くほどあっさりと、そして一瞬で終わってしまった。

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天使禁愛(十九)

カッツェがリキの残したメモを見たのはあれから数時間後だった。
 
食材の買い出しに出掛けている間にリキがいなくなったと知り、カッツェの表情が強張った。気配の消えた室内からしてすでに数時間経っていることを推測し、カッツェは部屋から飛び出した。
 
(…すでに数時間が経っている。これではリキの気配を追うことができない。あの馬鹿が…、こんな言葉を残して出ていくなど、お前は本当に馬鹿なやつだ…っ)
 
あんなに弱り切った体でどこへ向かったというのか。焦りを表情に出しながらカッツェは辺りを見渡す。リキの去った痕跡があれば見つけ出せるかもしれないが何もわからなかった。
 
手伝いにと寄越されたダリルとキャルは楽園での用事があり地上にはいない。ましてやイアソンもここ数日は不在である。とにかくリキの居場所を知る術がない。
 
無理に動き回り全く違う場所へと行ってしまえば無駄骨になるだろう。
 
「世話になった、さよなら…だと?今まで過ごしてきた中で別れの挨拶がただのこれだけというのか?何て薄情な奴なんだお前は!!」
 
リキの残したメモを睨み付けカッツェは叫んだ。その数秒後、誰かが上空からこちらへ飛んでくるのが見え、カッツェは目を見開いた。白い翼を持つ楽園の者だ。
 
「あれは…っ」
 
 
 
 
 
上空からキリエはリキの姿を見つけるとその勢いのまま一気に急降下した。
 
目の前に突然現れたキリエに気付くも弱り切ったリキは避けるほどの体力もなく、激しく地面へと押し倒されてしまった。背中の痛みに表情を歪めながらもリキは鋭い目つきでキリエを見る。
 
ニヤリと笑いながらキリエは身動きが取れないようにリキの腹に腰を下ろし、片手でリキの両手をまとめその頭上で地面に押し付けた。
 
抗おうにもそのような力ももはやリキにはない。息を切らせながらギリッと鋭い視線をキリエに向けた。真正面からキリエを見たリキはそこでキリエの異変に気付く。
 
(…こいつ、もう壊れてる……、キリエ…)
 
じっくりと見たキリエの状態はおかしかった。皮膚の色は浅黒く、目は赤く濁り、開いた口から覗く牙もとても鋭い。異常なほど変化したキリエを見てリキは言葉を失った。
 
「…キリエ…、お前、何でそうなったんだ……」
「殺す、犯す、喰う、リキ、お前を殺してやる!!死ね!!」
「うぐぅっ!!」
 
もう片方の手でキリエはリキの首を掴んだ。そのまま思い切り力を込め窒息させようとした。なす術もなくリキはされるがまま、息苦しさに目を細めた。
 
魔族となったキリエの力は相当強く、人間よりも弱くなった今のリキではその拘束から抜け出すことは不可能だった。意識が混濁しはじめ、リキの全身が弛緩した。
 
その瞬間を見計らい、キリエはリキの服を胸元から引き裂いた。突然の出来事に驚き逃げようともがくリキにキリエは歪んだ笑みを見せて言う。
 
「殺す前に犯して喰ってやるよ。俺の食事になって惨めにゴミ屑のようになって死ねばいいんだ!!」
「や、めっ……やっ」
 
下品に笑い声を上げながら服を引き裂いていくキリエに何の抵抗できないまま、リキは小さく悲鳴を上げた。
 
その時、ザアアアアアッと辺りの木々が騒めき、竜巻のような強風が巻き起こった。竜巻の中心から誰かが現れ二人に向かって猛スピードでやってきた。
 
「キリエ!!」
「…うぐぅ…っ」
「……ぁ…、……っ、ガ、イ…」
 
ガッと音がしたかと思えば、自分の上に乗り上げていたキリエの姿は消え、首の絞めつけもなくなった。ガイがキリエを蹴り上げリキの上から無理矢理引き剥がしたのだ。
 
何度も咳き込み肺に空気を送ろうとするリキを見てガイはチッと舌打ちをした。次いで苛立ったように地面へと倒れているキリエを睨み付ける。
 
「キリエ、俺の獲物をどうしようとした?」
「ぐっ…」
「答えろ!!」
「ぐぅぅっ、…殺すっ、殺すっ、殺す!!」
「…」
 
狂ったように何度もリキに向かってそう叫ぶキリエを見てガイは冷たく視線を送った。ガイの蹴りによって地面に突っ伏していたキリエはヨロヨロと立ち上がりリキの方へと向かう。
 
体を起こす力もなくなったリキは迫って来るキリエを見ながらぜぇぜぇと息継ぎをしているだけだ。
 
理性をなくしたキリエは目を血走らせながら視線の先にいるリキへと近付いていく。揺らいだ視界の中、リキはあの時のことを思い出していた。
 
そうだ、そうだった。キリエは…
 
 
 
 
 

ガイに犯されボロボロになった体で最後に見たのは、体を震わせながらも必死にそこから放心したガイを連れて行こうとするキリエの姿だった。
 
(…ああ、そうだったのか、…キリエは…ガイが………)
 
何故キリエが自分にあれほどの敵意を向けて来るのかわからなかった。楽園で過ごした日々の中でいくつか記憶を取り戻した光景の一つに、キリエのことがあった。
 
気が付けばガイの隣にはよくキリエがいた。頬を真っ赤に染めながら楽しそうに会話をするキリエに素っ気なく返事をするガイ。興味なさそうに返事をするガイに、それでも自分の言葉に返事をしてくれることが嬉しいのか満面の笑みでガイを見つめているキリエがいた。
 
あの頃からキリエの心はガイに向けられていたのだ。数人の仲間と会話していてもキリエの視線はいつもガイだけに向けられていた。何となくそれに気付いたことがあったが別に興味もなかったしどうでもよかったから。もしかすればキリエはガイのことを兄のような存在だと思い接しているだけかもしれないと考え、その視線の意味に気付くことなどなかった。
 
今になって思えばキリエにとってガイは全てだったのかもしれない。あの視線は尊敬する先輩や頼もしい兄、そういった者に向けられるものではなかったのだろう。一方通行の淡い思いがいつもその視線に込められていたのかとも思う。
 
キリエはガイに恋心を抱いていたのだ。
 
だがここは楽園であり同性同士の恋愛はつまり、禁忌である。だからキリエは言えないままずっと見つめていたのだ。もしかするとそれだけでよかったのかもしれない。思いを胸に秘めてガイの隣で楽しく過ごせるだけで満足だったのかもしれない。
 
だが、それを破ったのはガイだった。恋していた相手が別の同性を好きになり、犯した。そのせいでキリエはガイの後を追ってしまったのだろう。
 
同じ魔族となるも記憶は残らず、だがやはりガイの隣にはキリエがいた。キリエの心は無意識のままガイへと向けられていたのだろう。記憶をなくしてもガイへの思いは体へと染みつき同族となっても離れられずにいた。
 
そのまま、魔族のまま、ガイが傍にいることでキリエの心は安定していたのだろう。しかしガイの前にリキが現れてしまった。そこからじわじわとキリエの心は本人の気付かぬまま再び壊れはじめてしまった。
 
記憶のないガイも無意識にリキを求め、その行動を目にする度にキリエの感情は大きく揺れていたのだ。いつもガイの心にはリキがいて、キリエの中にはガイがいた。
 
嫉妬と焦燥感、様々な感情が爆発してキリエはこうなってしまったのだ。その板挟みにあったリキにしてみればいい迷惑であったが、彼らの思いには最後まで気付くこともなく事件は起きてしまったのだ。
 
誰に、何に対してこの怒りや悲しみをぶつければいいのかリキにはわからなかった。
 
恋や愛とはここまで醜く苦しいものなのか、一方的にぶつけて壊して、それでもそれは必要な感情なのだろうか。リキには何一つとして理解できる感情ではなかった。
 
ぽっかりと空いてしまった心に、どうすればその穴は埋まるのか。どうすればその心は自分の中で生まれるのか全くわからない。悩んだ末に辿り着いたのは堕天使となり生きることだった。
 
この先、楽園で生き続けてもリキにとっては生き地獄のようなものだっただろう。それならば全てを忘れ、何もかも捨てて新しい生き方を短い時間だけでも過ごす方が自分には最善ではないか。楽園で見つけられずとも愛やら恋というものが地上で初めて見つけ出せるのかもしれない。そう思いリキはユピテルへ願って、堕天使となったのだ。
 
 
 
 
 
ガイに告白されその勢いのまま無理矢理された行為によって、リキはガイやキリエの感情に気付いた。だがその感情に答えてやることは決してないだろう。リキの中でガイもキリエも気付けば近くにいた存在ではあったが、それ以上の感情は昔も今も少しも起こらなかった。
 
記憶が蘇る度に心臓は痛み、言葉にできない何かを叫びそうになる。仲間だと信じていた者から犯され、殺意を向けられ、そして今、また犯されようとしている。
 
ガイはそんなキリエの気持ちを知るはずもなく、リキへと襲い掛かったキリエに冷たく言葉を吐き出した。
 
「キリエ、俺に逆らいこいつを犯そうとしたな?これは俺の獲物だ。…これ以上は許さん。これまでの日々の中でお前とは楽しく過ごしたこともあった。だから許そうとも思ったがやはりそれは出来ん。俺に逆らい獲物を奪われそうになったんだ。キリエ、今すぐここで殺してやろう」
「…っ、ガ、イ……」
 
ガイの発した言葉にキリエは絶望を感じた。ガイには必要ではなかったのだ、自分は。何故こうまでガイから向けられる言葉に対して感情が揺さぶられ、心臓が痛いのかわからない。自分は魔族であり、たとえ昨日まで仲の良かった同族が誰かに殺されたとしてもどうでもよかった。
 
だがガイの言葉にはいつもキリエの心は揺らいでいた。優しい言葉を掛けられれば嬉しいと感じたし、冷たくあしらわれれば悲しいと感じた。何故自分の中でそのような感情が起こるのかはわからなかったが、ガイがリキへと執着を見せ始めた頃から新たな感情が生まれた。それはとても醜い、嫉妬、という感情だ。
 
自分が嫉妬していると気付きまず腹が立った。しかもその嫉妬しているのは虫けら同然の今にも死にそうな一匹の堕天使だ。その虫けらに夢中になっているガイを見る度に嫉妬という感情が膨れ、いつしかそれは自分の中では抑えきれないほどに膨れ上がってしまった。
 
単純に思ったのは殺すことだった。リキが死ねばきっとガイはまた前のように何ものにも執着せず、自分が話しかければ返事をくれるし笑ってくれる。そう思ったのだ。
 
楽園にいた頃の記憶はなくともキリエの体にはリキへの嫉妬心がしっかりと沁みついてしまっていた。
 
殺意を放つキリエに向かおうとガイは体の向きを変えた。そして歩き出そうとした瞬間、足が重くなり動きを止めた。どうしたのかと視線を下へ向け、ガイは目を細くした。
 
「何をしている…」
「…っ」
 
ガイの足首を掴み苦しそうに呼吸をしているリキに、ガイは苛立ったように口を開いた。
 
「おい、手を離せ。お前の相手はあいつを殺してからだ」
「……だ、駄目、だ……っ、殺したら、ガイ…っ、きっと…、後悔、する……っ」
「…後悔?何故だ?同族の一匹を魔族長の俺が自ら殺してやるんだ。何を後悔する必要がある?殺すなだと?そもそもアレに殺されかけてよくもそのようなことが言えたものだ。魔族同士の殺し合いなど日常茶飯事、珍しくもない。…その手を離せ、離さねばその手を切り落とす」
「…ガイっ…」
「さっさと離せ!!」
「うぐっ…っ」
 
訳の分からぬリキの行動に、ガイは捕まれた足を思い切り振ってその手から離し、勢いのままリキの腹を蹴り上げた。激しい痛みに震えながら体を丸めるリキを見てガイは大きく舌打ちをした。
 
再びキリエに向かおうとするガイにリキは弱々しい声で引き留めようとする。
 
「ガイ…、…だめ、だ…。キ、リエ、は…」
 
制止の声を無視してガイはキリエへ向かって歩いていく。するといくらか回復したキリエが目を見開き、ガイの背後にいるリキの姿をとらえた。その瞬間、キリエは高速移動でガイの視線をすり抜け、どうにか上半身を起き上がらせたリキの眼前へと迫った。
 
突然のことに驚き動けないリキにキリエはニタアッと笑った。そして片手の指先をピンと伸ばしてまとめ、鋭利な爪先でリキの心臓へと照準を合わせた。それにまずいと思うより早く、キリエの手は動いた。
 
ドスッという爪が体を突き抜ける音がした。

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天使禁愛(十八)

オルフェからの手がかりだけでは何もわからなかった。
 
ガイとリキの繋がりを憶測だけで判断するには材料が少なすぎるのだ。それはきっと確信とも思えるものではあるが、絶対とは言い切れない。
 
ラウールからは生き急ぐなと忠告され、去り際にオルフェからも自重しろと言われた。しかしそのようなことをしていては何も先には進まないのだ。
 
イアソンはとうとうユピテルの部屋の前までやってきた。真実を知るためにはここへ来る必要があり、それは同時にイアソンのブロンディーとしての、そして天使としての生き方を失ってしまうかもしれないということでもあった。
 
それでもイアソンはユピテルのもとへとやってきた。そうしなければならないと自分の中の何かが言っているのだ。
 
ドアベルを鳴らすと扉はあっさりと開いた。そしてその奥には一人佇み、ガラス越しに地上を眺めるように俯くユピテルの姿があった。その後ろ姿はやけに寂しそうで悲しそうでもあった。
 
「ユピテル、イアソンだ。失礼する」
『………』
 
イアソンは静かに中へと入り、ユピテルの数歩手前までやってきた。ユピテルは外を眺めたまま動かない。しばらくの間、音のしない空間で二人は何も言わずにじっとしていた。
 
それから少しして、ゆっくりとした動作でユピテルは振り向いた。
 
ユピテルとは楽園の主であり、創造主であり、親である。その姿は天使でもなく魔族でもなく、ましてや人間でもない。その姿は未知の物質から成り立ち、誰もが気軽に触れられるものではない。しかし目の前にユピテルは存在している。
 
ユピテルと対面することができるのはユピテルの作りだした始めの天使たち、つまりはブロンディーだけなのである。
 
少し考え、イアソンは口を開いた。
 
「…まだ、リキを連れてこれないでいる。しばしの猶予をいただきたい」
『………』
「そして教えてほしい。わたしが聞きたいことはアナタにはもうわかっているのだろう?」
『………』
 
ユピテルはじっとイアソンを見つめ、言葉は脳へと信号となって伝わる。
 
『どうしてもしりたいのか、りきのきおくを』
「ああ、わたしは知りたい。リキが堕天使となった理由を。そしてわたしがリキをどうしようとしているのかユピテルに知ってもらいたい。それがわたしの願い続けた答えに辿り着く一歩なのかもしれないのだ」
『……てんしでいられなくなるかもしれないぞ』
「それでも構わない。それがわたしの答えであり、未来なのだろう」
『…そうか、それならばよかろう。わたしのかわいいこどもたちよ、どうかしあわせに…』
「感謝する、ユピテル」
 
ユピテルの手のようなものがイアソンの全身を包み込んだ。その瞬間、イアソンの脳内にリキに関する隠された映像が流れ込んでくる。そしてその映像はリキだけではなく、魔族長であるガイやキリエの記憶も同時に。
 
リキの感情はまるで嵐のようで、しかしそれはイアソンのそれにも似ていた。怒りや悲しみではなくもっと他の感情はとても似ていて、とても切なく苦しいと思ってしまった。きっとリキなのだ、イアソンの願い続けてきた、探し続けてきたこの激情は。
 
映像が終わり、イアソンは確信した。その確信はユピテルにも伝わったのだろう。ユピテルは静かに扉へと視線を向けた。
 
『いきなさい、そしてかなえなさい。わたしはねがっている。わたしのこどもたちよ、どうかしあわせに』
「ユピテル、我が父よ、我が母よ、願わくばあなたにもどうか安らかなる時が来るよう祈っている…」
 
まるでそれは今生の最後の挨拶であるかのようだった。イアソンは軽く頭を下げ、去っていった。残されたユピテルは再びガラス越しに見える地上へと視線を移し、何かを願うように目を閉じた。
 
その後ろ姿は少し嬉しそうであったが、同時に寂しそうにも悲しそうにも見えた。もしかすると泣いていたのかもしれない。しかしユピテルは泣かない。ユピテルは天使ではなく魔族でもなく、ましてや人間でもない、涙など流すはずのない生命体なのだから。
 
 
 
 
 
地上へと再び向かう住んでのところでラウールに呼び止められ、イアソンは足を止めた。そして静かにラウールに視線を向けた。
 
「…その顔ではもう何を言っても無駄か。俺がいくら止めようともお前は行くのだろう?」
「……ああ、そうだ。わたしの心は決まった。誰に何と言われようともわたしはわたしの思うまま、心のままに動くことにした」
「戻ってこないつもりなのか?ブロンディーである自分を、楽園を捨ててでもお前は進むと言うのか?」
「そうだ。それがたとえどのような結末であったとしても、わたしは行かなければならない」
「きっともう二度と戻ってこれないぞ」
「覚悟の上だ」
 
イアソンの瞳はギラリと光り、とても力強かった。きっとそれは全てを覚悟した情熱の光だったのだろう。
 
ラウールは一度俯き、眉間に皺を寄せながら深く息を吐いた。数秒間俯いたままだったが決心したように顔を上げた時にはもうその表情はいつもの不愛想なものに戻っていた。
 
ラウールもまた覚悟を決めたのだろう。一番の親友であるイアソンを見送るための覚悟を。
 
「ならば行くがいい。俺もこれ以上は止めるつもりもない。勝手にしろ」
「…わたしを軽蔑したか?たかが一匹の堕天使のためにこうまでするわたしを」
「…軽蔑などしないさ。おまえはいつも何をするにも真っ直ぐだったからだ。それに善悪をつけるほど俺は偉くはないし、そもそも何が善くて何が悪いかなど誰にもわからないだろうよ。それを決めるのは自分自身で、そしてユピテルだ」
「ラウール…」
「いいかイアソン、他の誰を悲しませてもいいがユピテルだけは裏切ることは許さない。我らの創造主であるユピテルはいつも見守っている。誰がどうなろうともいつもどこかで喜び、悲しみ続けている」
「ああ…、わかっている」
「我らに別れの挨拶など無用。とっとと行け」
「…ああ、そうしよう。ラウール、いつかまた会おう」
 
ラウールが後ろを向き歩き出した瞬間、イアソンもまた飛び立った。高速で真っ逆さまに下りていくイアソンをラウールは決して見ることはなかった。
 
羽ばたきの音とともにラウールは足を止め、前を見つめたまましばらくじっとしていた。何かを考えるように視線を上げれば空には美しい青がずっと遠くまで広がっている。
 
久しぶりにじっくりと見た空は澄み渡っていて、本当に美しいと思った。だからラウールは何となく、きっとユピテルもこの空を見て同じことを思っているだろうと、ただ何となくそう思ったのだった。
 
 
 
 
 
最後の時が近付いている。
 
体はとても重く、まるで岩でも背負わされているかのよう。思考が上手く働かないし、視力もだいぶ落ちた気がする。聴力だけはまだしっかりとあるようでマシだったが、やはりとても怠い。この寿命が尽きようとしているのだ。
 
あれから何度も睡魔のようなものに襲われ、リキは眠ったり起きたりを繰り返していた。
 
ガイのことを思い出してからそれは益々酷くなったような気がする。そして眠るたびに夢に見て思い出す楽園での出来事。あの日のことを少しずつ思い出していくうちにリキの顔色は悪くなり、時々嘔吐感が押し寄せるようになっていた。
 
あの日の出来事はリキにとって最大の悪夢であった。何もかもが崩れ落ち、失った瞬間だった。
 
「…ガイ、俺は……」
 
きっと一生愛せることはない。ガイという親友を大切にすることはできても、恋や愛はきっと無理なのだ。それほどの情熱を感じたことはなかった。ガイに魅力がないわけではない。ただ単にそこに激情が生まれなかっただけで。
 
きっと自分はガイに対して酷いことを思っているのだろうことは自覚していた。しかしどうしても自分の望む激情がない限り、ガイを友情以上のものへと向けることができないから仕方がなかった。
 
そしてその激情が生まれたことを自覚したのはつい最近。その気持ちに気付いたのは本当に最近だった。きっとこれがリキの求めていたものだったのだ。
 
イアソン。
 
今、リキの心を占めているのはイアソンだけだった。あれからもう何日も会っていない。会いたいと言う気持ちが日増しに膨れていくようでとても苦しかった。これがきっと愛というものなのだ。
 
イアソンがリキに与えたものはアガペー。何も奪わず与えるだけのイアソンにいつもリキは戸惑っていたのかもしれない。それを愛と感じるまで時間がかかった。じわじわと心を占領するイアソンの愛はきっとイアソン自身にもわかっていなかった。
 
お互いの感情に気付くまで長い時間がかかったが、こうして離れている時間が長ければ長いほど会いたくなる、胸が締め付けられるほどに焦がれているのが証拠なのだろう。
 
「イアソン…、でも、これ以上あんたを苦しめ続ければ……」
 
イアソンに会いたい。寿命が尽きる瞬間だけでもいいから最後に顔が見たかった。愛というのを知れたからもう死んでもいいかな、とリキは苦笑した。
 
これ以上皆に迷惑をかければ皆の人生を傷付けてしまう。自分の人生は堕天使になった時から短いものだと自覚していた。長く生きられないものだと知っていたから別に死ぬのは怖くなかった。
 
きっと愛というものを知ることなく死んでいくものだとばかり思っていたのに。
 
「……俺もいい加減、けじめをつけろって…」
 
そう呟くとリキは紙にメモを書き目につきやすい適当な場所に置く。先程までカッツェがいたがいまはどこかへ出かけていていないようだ。そしてフラリと立ち上がると力の入らない体に鞭打ってどうにか歩き出した。
 
扉を開け、外へと足を踏み出したリキは空を見上げる。
 
「…イアソン……」
 
切ない表情で呟いた声は誰に聞かれることもなく静かな森林へと吸い込まれてしまう。寂しそうにフッと笑い、ゆっくりとリキは歩き出した。森の奥深くへと。

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天使禁愛(十七)

キリエにとってガイという存在はとても大きく、その姿はいつも輝いていた。
 
その日、キリエはガイを探して楽園内を歩いていた。チームのリーダーであり、キリエにとって最も大切な存在であったガイ。時間さえあればキリエはガイの傍にいた。
 
ガイはとても優しくて強かった。身長も高く体もガッチリとしていて男らしいために女たちからは人気が高く、毎日のようにプレゼントが届き、告白もされたりしていたが、当の本人は交際の申し入れなどは片っ端から断っていた。
 
きっと今は恋よりも友情の方が優先なのだろうと皆は言い、ガイも笑うだけで何も言わなかった。
 
そんなガイに少なからずキリエは恋をしていた。しかし同性同士の恋愛は禁忌であり重罪に値するものであったため、その感情はずっと心の中にしまっていたのだ。
 
彼に恋人が出来れば仕方ないし、それが恋愛であるし、それでいいと思っていた。同性同士なのだから一生自分とガイが恋人になることはないし、抱き合うこともないのだから。友でいられるだけで十分だと。
 
しかしそんなある日、キリエの中の感情を狂わせる事件が起きた。
 
探しに探してようやくガイを見つけたキリエは、遠くにいる彼に向って声をかけようとした。しかしガイの目の前には誰かがいた。リキだった。リキと一緒にいるからといって別に声をかけてはいけない理由はない。今度こそキリエは大声でガイの名を呼ぼうとした。
 
その瞬間、ガイはリキの体を突然押し倒したのだ。とっさのことに驚きキリエはかける声を飲み込んでしまった。そしてそのまま二人の様子を陰からこっそりと覗くことにした。
 
喧嘩ならば止めに行けばいいし、躓いて転んだのなら立ち上がったのを見計らって声をかければいい。そう思っていたが何やら二人の様子は違っていたようだった。
 
ガイは嫌がるリキの衣服を無理やり剥がし、獣のような表情でリキを襲い始めたのだ。訳も分からずキリエはその場から一歩も動くことができなくなってしまった。
 
強姦ならば緊急コールで人を呼ばなければいけないのに、キリエはそれもせずにただじっと見ているだけ。気が付けばリキの体はボロボロになり血と精液で全身はドロドロになっていた。それでもガイはリキを犯し続け、リキの首を思い切り絞めだしたのだ。
 
苦しそうにもがくリキを見ながらガイは叫んだ。
 
〝リキ、愛しているんだ!!〟
 
その瞬間、キリエの全身から血の気が引いた。何もかも聞こえなくなり、頭の中が真っ白になった。
 
今、ガイは何と言った?
愛している?
リキを?
リキを愛している?
 
(ガイが、リキを、愛している…?)
 
何度もその言葉を頭の中で繰り返してみた。ガイはリキを愛していると言ったのだ。愛していると。
 
「…何で、ガイ…、愛してるって…、俺、俺だって…、俺だってガイを愛してるのに…、だって…、だって、それはいけないことで…、でも…、でも、ガイは…リキを…、愛、して…?」
 
一瞬にしてキリエの心は崩れてしまった。今のガイの言葉によってキリエの中の均衡は音を立てて崩壊してしまったのだ。それを禁忌だと知っていても思うだけならば罪にはならないのだとずっと言い聞かせてきたのに。
 
ガイはそれを破ってしまった。それを破らせたのはリキ。リキがガイに破らせてしまったのだ!!
 
そして次第にキリエの中で憎むべき相手はリキになっていった。リキがガイに禁忌を犯させてしまったのだ。だから憎むべき相手はリキであり、守るべき相手はガイだ。ガイを守らなければ。ガイを、ガイを愛しているのは自分なのだから、ガイを守るのは自分なのだ。自分だけがガイを守れるのだ。
 
壊れてしまったキリエはガイを守ることだけを考えるようになった。ガイを守ることは即ちガイを愛することなのだ、と思うようになってしまった。一方的な、自己中心的な愛がキリエの中に目覚めた瞬間であった。
 
窒息させられ瀕死のリキを凄まじい形相で未だに絞め続けているいるガイを見て、キリエはこのままではガイが殺人の容疑で罪人にされてしまうと思い慌ててガイの傍まで走った。
 
放心したままのガイに声をかけるが聞こえているのかいないのか、ガイはじっとリキを見つめたまま動かない。ボソボソと何かを呟いているようでそっと耳を近づけた。すると聞こえてきた言葉にキリエは目を見開き、ギリッと歯を噛み締めた。
 
「…リキ、リキ、リキ…、愛しているんだ…、こんなに愛しているのに、リキ…、リキ…、リキ…」
「…っ!!」
 
キリエは嫉妬と悲しみで気が狂いそうになった。ガイが見ているのは目の前にいる死にかけのリキだけなのだ。自分がこうして傍にいるのに存在さえ気付かれていないなんて。
 
ぐったりと動かないリキを睨み、キリエはガイの手を握った。
 
「俺を見てよ、ガイ!!」
 
そう叫んだ。しかしガイの様子は変わらなかった。ひたすらリキの名を呼び、愛していると繰り返し言い続けている。キリエのようにガイも壊れてしまったのだろうか。
 
キリエは顔を真っ赤にして怒りの感情のままリキを睨み付けた。しかしリキは真っ青な顔をして目を閉じているだけだった。息をしているのかさえわからない状態のリキをもう一度睨み、キリエは無理矢理ガイを引きずるようにしてその場から去ろうとした。
 
ガイの視線はリキを見つめたままだった。しかし体には力が入っていない。これ幸いにとキリエはガイを半ば引き摺るようにして急いでリキのそばから離れていった。
 
次第にガイの視線は虚ろになり、ブツブツと何かを呟き続けているがキリエは聞かないようにした。二人の姿を複数人の者が見ていたが遠くからだったために誰も気にする様子もない。
 
そして残されたリキはやがてユピテルによって保護されることになる。それが事の全容である。統括責任者のオルフェにはユピテルが適当な理由をつけて始末書に記入させた。
 
だから真実を知る者はユピテルのみで、当事者であるリキとガイ、そしてキリエはそれぞれが堕天使となり記憶を抹消されたために真実は闇に葬られることとなったのだった。
 
 
 
 
 
とても嫌な夢を見たような気がする。
 
うたた寝をしていたキリエはぼんやりとする頭でその夢を思い出そうとしたが無理だった。適当なソファーでゴロリと横になったまま眠っていたせいか少し体が痛かったが、特に気にすることなく欠伸をしながらソファーから降りる。
 
「はー…、何だかやけにリアルな夢だったような…。まぁ、どうでもいいけど。そんなことよりガイはどこに行ったんだよ…」
 
辺りを見回すがガイの姿はなく、キリエは少し苛立った様子でチッと舌打ちをした。
 
最近、ガイはある堕天使に少し熱を上げているらしい。キリエはそれが気に食わなかった。いつもであれば適当に見つけた堕天使を襲って食って捨てて、ただそれだけだったのに。たった一人の堕天使にあのガイが夢中になっているのだ。
 
名前は何と言っていたか。キリエの苛立ちが膨れだした瞬間、ギイ…と音がして部屋の扉が開いた。ガイが帰ってきたらしい。
 
ここは魔族長の部屋であり、つまりはガイの部屋で、キリエはいつもそこへノックもなく入り我が物顔でドカリとソファーへ座っているのだ。
 
ガイはそれを勝手にしろと言わんばかりに気にする様子もないらしい。それを許されているのは昔から親しくしているキリエくらいのもので、キリエもそれをひっそりと心の中で喜んでいる。
 
まるでそれが自分だけの特権で、自分だけがガイの特別だと言われているようでうれしかったのだ。実際にはガイのような大魔族の長に近寄るような者がいないだけなのかもしれないが。
 
ほとんどの魔族はガイの凶暴さを知っておりそれを恐れているためになるべくなら遠ざかりたいと思う者を、キリエだけは何故かガイに好意を寄せているのだ。
 
初めて出会った時からずっとキリエはガイの傍にいたがったし、ガイも別にキリエを近づけようとも遠ざけようとも思っていなかったから好きにさせているだけなのだろう。特にキリエだけを好いているというわけでもなさそうである。
 
ガイにとってはどれも同じ魔族であり、弱者だった。弱者は殺す価値もないが、歯向かえば殺す。ただそれだけのことだ。
 
「どこ行ってたんだよ?せっかく来たのに待てど暮らせど戻ってこないし」
「…来いとも待てとも俺は言っていない。お前が勝手に俺の部屋に入って勝手に待っているだけのことだろう?」
「それはそうだけど…」
「…用がないなら出ていけ。ここは俺の部屋だ」
 
何やら機嫌が悪そうなガイの様子にキリエは少しムッとしたように視線を向けた。
 
「やけに機嫌が悪いけど、エサが見つからなかったとか?アンタだったらちょっと気配を感じればすぐに捕まえられるだろ。堕天使なんて探そうと思えばそこらに散らばってるんだから」
「ふん、邪魔が入ったんだ。せっかく見つけたと思えば…」
「……見つけたって、何を?」
「…俺のエサ、だ。アレは絶対に生きているはずだ。近いうちにまた地上へ行って今度こそ俺が食う。アレは俺だけのエサだ」
「………」
 
思い出したようにニヤリと笑ったガイに、キリエは確信した。
 
ガイの特別なエサ、最近熱を入れている堕天使、例の堕天使を思い出してガイは笑っている。ゴミくずのような堕天使一匹にガイは笑っている。
 
全身の神経がプチプチと切れていくような気がした。キリエはガイを見て尋ねた。
 
「…ねぇ、アレって誰のこと?堕天使?」
「ああ、堕天使の…名は、リキ、だったか…。アレは今までの中でも最高ランクの美味そうな匂いをさせていた。だからアレを食うのは俺だ。誰にもアレは食わせん。絶対に俺が食う」
「………リキ…」
 
ガイが初めて獲物にした堕天使の名前を覚えた。その時、キリエの中で全ての感情が冷え、固まってしまった。
 
殺すしかない、そう思った。ガイの特別になった堕天使のリキを殺さなければ、自分だけがガイの特別でなければ、ガイの特別は自分だけがなるのだ。リキを殺す。
 
キリエの口元がニタリと弧を描いた。
 


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天使禁愛(十六)

とても好きだった友がいた。ずっと思い出せなかったが、ようやく思い出した。
 
「………ガイだ」
 
ずっと忘れていた名前、彼の名を口に出した瞬間何もかも思い出してしまったのだ。あの時、ガイに言った言葉、された行為、何もかも全て思い出した。
 
長く眠っていたリキはガイの名をボソリと呟いて目を覚ました。意識の戻ったリキに気付き、少し離れたところで読書をしていたカッツェが声のした方へと視線を向けた。
 
「ああ、やっと起きたのか。とても長い時間眠っていたぞ」
「…カッツェ?何でここに…」
 
そう聞きかけて思い出した。そうだ、自分はずっとイアソンと一緒だったのだ。何処へ行ってしまったのだろう。辺りを見回すがやはり彼の姿はない。
 
ゆったりとした動作で立ち上がりふと気づく。いつも疲れた様に重苦しい体が今日は少しばかり軽いのだ。
 
「………イアソン、どこだ?」
「…さあ…、俺が来た時はお前しかいなかったが」
「本当に?」
「ああ」
「………」
「……」
 
いつもと少し違うカッツェの雰囲気にリキが何やら考え込むように俯いた。そしてハッとしたように顔を上げ、カッツェを見た。少し顔色を悪くさせ、不安そうにしてリキは口を開いた。
 
「違う、イアソンは、俺を、俺に…」
「…リキ」
「俺のせいで、イアソンが楽園にいられなくなる…っ」
「リキ、少し落ち着け」
「でもイアソンが」
「リキ!!」
「…っ」
 
そうだ、イアソンはリキを助けるために禁忌を犯した。許されることのない行為。天使の同性同士の交わりが知られた瞬間、その天使は堕天使となり地上へと落ちる決まりなのだ。
 
イアソンもそれは知っているはずなのに。知っていながらもイアソンはリキを助けるために罪を犯した。きっとユピテルに知られてしまえばイアソンは即刻堕天使にされてしまうだろう。
 
リキの顔から徐々に血の気が引いていくのが見えた。体が震え始め、次第に冷や汗のようなものが出てくる。カッツェはとにかく落ち着くようにとリキの体を抱き締めた。そしてあやすように背中をポンポンと叩いてやる。
 
「とにかく落ち着くんだ。せっかくお前を想ってここまでしているのに、当の本人がこのような状態では駄目だろう。彼の行為を無駄にするつもりか?」
「そうじゃない、でも、イアソンが…」
 
今にも泣き出しそうに声を震わせるリキに、カッツェは何度も背中を叩いてやる。とにかくリキの震えが止まるまで、カッツェは何度も何度も同じ動作を繰り返していた。
 
どうにか落ち着きを取り戻し、リキの顔色も少しばかり良くなった。それでも、今にもイアソンを探しに外に出ようとするリキに、それを引き留めるようにカッツェは抱き締める腕の力を抜こうとしないのだ。
 
リキは焦ったように放してくれと頼むがなかなか腕の力は抜けない。
 
「カッツェ、イアソンを探さないと」
「今は駄目だ。今は…」
「どうして!!」
「………楽園へ緊急帰還命令が出たようだ。もしかすると今回の件に関して何か知られてしまっているのかもしれない。だがイアソン様ならどうにか切り抜けて再びお前に会いに来るはずだ。だからとにかく今は安静にしていろ」
「でも…」
「我々に楽園へ行く手段はないのだからどうすることもできないだろう?例え行けたとしてもこんな状態では歩くこともままならないんだ。ゆっくり落ち着いて体を回復させることが最優先だ」
「…わかった、…わかったよ……」
 
楽園へは行くことは不可能と言われ、リキは何も言えなくなってしまった。そうだ、既に自身は堕天使なのだから帰る場所はここだけなのだ。この地上だけが今の自分が生きていける場所であり、自らが望んだ場所でもある。
 
カッツェはリキの体をそっと寝かせ、優しく頭を撫でてやった。
 
「そばにいるから安心して眠れ。イアソン様よりは頼りないだろうが結界くらいであれば俺にも作れるし、いざとなったら戦闘もそれなりにできるほどには鍛えている。…まぁ、何かあった時のため、逃走するために鍛えているだけだがな」
「…あんたはほとんど人間なんだから無理しないでくれよ。怪我したら大変だし、…死んだら嫌だ」
「リキ…。……俺は結構死神から嫌われているんだ。心配しなくていい」
「……何だよそれ…」 

少し笑い、そのままリキは再び眠った。
 
イアソンのこと、ガイのこと、考えることはたくさんあるのに思考はずっと鈍ったままだ。次に目覚めた時、その時こそ最後の決着をつけると微睡む意識の中で決心したのだ。
 
それまでは眠っていよう。そしてまた夢を見よう。天使だった頃の記憶を思い出すために。
 
 
 
 
 
楽園の一角にイアソンの姿はあった。じっと足元を眺めたまま動かず、難しい表情をしている。
 
この場所はリキがガイに襲われた場所だ。首を絞められ瀕死の状態で発見されたリキがいた場所。周りには誰もいなかったということだ。
 
オルフェに聞いた話ではその場にいたのはリキ一人だったらしい。リキは誰かに強姦され、犯人は未だに不明ということになっていると。オルフェの話からしてリキとガイには何の繋がりもないようだ。
 
しかし不審な点もあるらしい。その事件の当日、真っ青な顔をしたキリエが放心したように無表情のガイを連れて逃げるように去っていくのを見た者がいたというのだ。しかもその数時間後にガイは罪を犯した者として処罰されたという。そしてガイの後を追うようにキリエは堕天使となり地上へと落ちていったと聞いた。
 
そこで気になったのはリキとガイの接点が全くないことと、キリエという第三者の存在だ。イアソンの考えではガイがリキを襲ったために二人は同性愛の罪で堕天使となり、リキは地上へ、ガイは堕天使から魔族へとなったというものであったのだが。
 
キリエという者が現れたのは予想外だった。
 
リキは知らない誰かに襲われ一人で発見され、ガイとキリエが二人でいたところを複数の者が見ている。リキの対応に当たったオルフェが言うには相手を特定するにもリキは知らないの一点張りであったし、ガイに関してはユピテルから傷害の罪により堕天させるという報告のみだったらしい。キリエについては自らの希望ということだ。
 
(…だが、魔族になったガイのリキに対する執着はとてつもなく凄まじいものだった。オルフェも曖昧な部分が多すぎると言っていたが全てはユピテルの決定によるものだ。曖昧でも何でも我々はユピテルの決定に従うだけに過ぎない。ならば真実を知るのはユピテルのみということか…)
 
ユピテルは温厚であるが時に非情だ。何かを捨てる時は躊躇なく行う。それが楽園の主である証であり存在である。常に正義であり平等であることが勤めでなければならない。それがユピテルなのだ。一つの感情に囚われることは決してあってはならない。
 
イアソンの表情は益々強張り、眉間に深く皺が寄る。
 
(全てを知るのはユピテルのみということか…)
 
オルフェの顔に嘘偽りはなかった。知っている内容をそのままイアソンに伝えただけだ。しかしその内容は何一つ真実ではない。それだけは確信した。リキもガイも記憶は消されているため曖昧に思い出す部分はあれども全てを思い出すことはできないだろう。
 
そしてもう一つ、その現場に居合わせたであろうキリエという者。彼がきっとガイをその場から逃がしたのだろう。きっとキリエはガイの近くにいるはずだ。キリエは自ら堕天使となったというのだから何かあるに違いない。もしくはそれは真実ではなく本当はガイと二人でリキを襲い逃走を図ったかだ。
 
どちらにせよ一度この内容を整理する必要がありそうだ、とイアソンは結論した。地上に残してきたリキのことも気になる。
 
「…リキ」
 
とにかく会議は一旦終わった。これから再び地上へ行きリキの様子を見に行かなければならない。目を閉じたままだったリキのことが気になって仕方がないのだ。カッツェに看病を頼んだがやはり自分の目で見なければ。リキに会いたい、そして抱きしめたい。
 
イアソンはバサッと翼を広げ地上を見下ろした。だが飛び立とうとした時、後ろから誰かの声がした。
 
「イアソン、あまり生き急ぐなよ」
「…ラウール、それは一体どういうことだ」
「言葉の通りだ。イアソンお前、少し前とは人が変わったように見えるぞ。…リキが関係しているな?」
「…何が言いたい?」
 
後ろを振り向き声の主であるラウールに視線を向けた。ラウールの表情は思いのほか険しく、少し怒っているようにも見えた。まるで何かを知っているような言い方に、イアソンは意味が分からないというように首を傾げる。
 
そんなイアソンにラウールの表情は険しさを増し、次の瞬間には苦虫を噛み潰したような顔になりイアソンに言った。
 
「…まるで愛する人を想うみたいな顔だよ、お前のその顔は。誰に対してかはあえて言わないが、それは危険すぎる。決してあってはならない禁忌だぞ、わかっているのか?それとも無意識なのか?」
「……何を見てそれを禁忌だと言うのかは知らないが、わたしはそれを禁忌だと考えん。禁忌だと言うならそれは我らの存在こそが禁忌なのだろう…」
「イアソン!!」
「今は言うな。それを決めるのはユピテルであり、真実を知るのもユピテルだ。我らはただその流れに身を委ね、来たる時来る処罰を受けるのみ。その日までわたしはわたしの思う道を行く。今、この場でそう決めた。…引き金を引いたのはラウール、お前だ。踏みとどまっていたがお前の言葉がわたしの感情を動かしてしまったのだ。恨みなどない、むしろ感謝しているぞ」
「無理矢理俺まで巻き添えにするつもりか?…最後の忠告はしたぞ、あとはもう知らん!」
「心配は無用だ、後悔などない。話は終わりだ、わたしは行く」
「…愚か者めが」
 
ジトリと睨んだラウールを鼻で笑い、イアソンは地上へと降下していった。ラウールの瞳は心配そうに揺らぎ、小さくなっていくイアソンの姿をずっと見つめていた。
 
イアソンの姿が消え、ラウールは疲れた様にため息を吐き呟く。
 
「……後悔などない、か…」
 
そう呟き、ラウールは歩き出した。

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天使禁愛(十五)

友が一人ずついなくなり、気が付けばリキは独りになっていた。始めは寂しくて辛くて仕方がなかった。だがしばらくして、リキの周りには新しい仲間ができていた。
 
その中心にいたのはガイだった。ガイには元々仲間がいて、ガイの誘いでリキはその中に入ることになった。
 
毎日のように仲間で食事をして、遊んで、寝て、その日々の繰り返しだった。天使にとってそういった日常はとても幸せなことで、リキの生活もまたとても充実したものとなっていた。
 
だが、ただ一つ、リキには理解できない感情があった。
 
それは愛という感情だ。人を愛すること、友を愛すること、他人を愛すること。愛すると言う感情がどのようなものなのか、リキにははっきりとよくわからなかった。いや、わからなくなってしまったのだ。
 
愛とは何か。
 
友と、好きな人と一緒にいることはとても楽しいことだし好きだった。しかしそれは楽しいから好きなだけで、本当は自分が誰のことも愛していないのかもしれないと思うようになっていた。
 
だからガイに仲間にならないかと誘われて、皆で楽しい日々を過ごして、毎日を生きていた。
 
しかしある日、ガイから愛していると言われ、リキの中の何かが狂い出した。愛しているから一緒にいて欲しい、愛しているからいつまでも隣にいてくれ、愛しているから、と。
 
好きと愛は似ているようで全く違うものらしい。それがわからずリキはガイに尋ねた。
 
〝今まで一緒にいて楽しくしていたが、それは愛とは違うものなのか?〟
〝自分ではそれで満足だし、ガイもそれで満足だろう?〟
 
と、そう言ったのだ。するとガイは顔色を変え、リキに詰め寄った。
 
〝そうじゃない、俺はリキを愛しているんだ。少なからず俺のことを好きと思う気持ちがあるのなら、リキにも俺を愛して欲しい〟
 
そう言われますますわからなくなった。好きと愛は違うものなのに好きなら愛してくれとガイは言うのだ。
 
好きは好き、愛は愛なのだから好きでも愛することはできない。だって愛するということは人生でたった一度きりの激流のようなモノなのだから、とリキは答えた。
 
体験したことはないが愛とはそういうものらしいから、ユピテルがいつも皆にそう言っているじゃないか、とリキは言った。それを聞いたガイの表情はますます変化し、怒っているのか泣いているのか、とても複雑な表情をしていた。
 
何故ガイがそんな顔をするのかリキには理解できなかった。
 
次の瞬間ガイの両手はリキの首にまわり、力の限り絞めようとしていた。リキは驚きに目を丸くさせ抵抗しようと必死にもがいたが、ガイの握力はかなり強く、リキの力では指一本も動かすことは出来なかった。
 
どうしてガイは自分の首を絞めるのか、どうしてガイはこんなに怖い顔で自分を見るのか、何もわからない。ガイのことは好きだった。いつも一緒にいたいと思うほど好きだったのに、なのにどうしてガイは自分を殺そうとするのか。
 
始めからリキにはガイを愛するという気持ちはないのだ。好きという感情はあれど愛という感情とは全く別のモノ。好きは仲間の皆に平等に与えられるモノなのだ。そのリキからの気持ちをガイは愛だと勘違いしてしまったのだ。だからガイはリキを愛してしまったが、リキはガイを愛してはいない。
 
すれ違いの感情がお互いを擦れ違いさせ、ガイはその感情を別のモノに変換させてしまったのだ。リキから愛されることは一生ないのだと気付き、絶望し、愛は憎悪へと変わった。
 
リキの口から愛していないと言われるのが怖くて、瞬時にガイはリキから言葉を奪うために首を絞めるという行為に走ったのだ。
 
未だにリキには愛という感情がどのようなモノかわからない。純粋過ぎる心がガイを悪魔へと変え、純粋過ぎるがゆえにリキは堕天使となってしまったのだ。
 
だがきっと近いうち、その愛という感情に気付くだろう。長い間探し続けていたモノがもうすぐリキのもとへとやってくるのだ。だがそれはリキの寿命と引き換えに少しずつ近づき、手に入る時、二人はどのような選択をするのだろうか。
 
 
 
 
 
夢の中、リキは必死にもがいている。苦しくて息が出来なくて辛くて、目の前が真っ暗になった。
 
徐々に体から力が抜け、もうすぐ命が尽きる、そう感じていた。だが、目を閉じて意識が途切れ、次に目を覚ました時にまだ自分が生きていることを知った。
 
確かにそこにはガイがいたはずなのに、目の前にいるのはユピテルであった。力の抜けたリキの体をそっと抱え草むらの中を歩いていた。広い草原の中にユピテルとリキだけがいたのだ。
 
ガイはどこへ行ったのだろうか。ふとリキはそう思い辺りを見渡した。しかしどこを見てもガイの姿は見つからなかった。その様子に気付いたユピテルは静かにリキの顔を見ているだけだ。
 
「…なぁ、どうしてユピテルがここにいるんだ?それに俺、さっきまでガイと一緒にいて、ガイは…」
 
そう言いかけたリキにユピテルは何も言うなというように視線をそらした。
 
ガイに絞められていた首がヒリヒリと痛み、リキは時々苦しそうに咳をしている。そんなことをされてもリキはガイのことを嫌いになれなくて、それよりも最後に見たガイの表情がとても悲しそうだったのを思い出して、ガイの姿を探していた。
 
リキの思考を読み取ったのか、ユピテルは歩みを止め、そっとリキを地面に下ろした。
 
「…俺、ガイを傷付けたのかもしれない。でも、…愛じゃないんだ。ガイのことは好きだけど愛とは違う。なら愛ってどんなモノなんだ?一生に一度きりのモノってあんたは言ったから、激流みたいなモノって言ったから、だからガイはそれじゃない。ガイに嘘はつけない。でもきっとそれで俺はガイを傷付けたってのは理解できる。だから俺…」
 
リキは苦しそうに表情を歪め、そして決心したようにユピテルに言った。
 
「きっと楽園には俺の思ってるような愛は無いんだと思う。だからといって一生その愛を知らないで生きていくのは嫌だ。だから俺は探しに行く。何年かかってもいい、死ぬまでに見つからなくても後悔しないし、無けりゃぁ無いでいい。ただ探したいだけなんだよ、激流みたいなモノをさ…、だから、だからユピテル、俺は地上へ行く。ここに無いのなら別の場所で探してみるだけだ。だから俺を堕天使にしてくれ」
 
その言葉にユピテルは驚くことなく静かにじっとリキを見つめているだけだった。そして目を伏せ少し悲しそうにリキの頭を撫で、小さく頷いた。
 
もしかするとユピテルは始めからわかっていたのかもしれない。リキがいつかそう決断することを。
 
リキは天使としては普通だった。しかし生まれ持った天使としての性質は異端で、周りと少し違っていた。それは楽園の主であるユピテルが一番よく知っていた。
 
良くも悪くもリキという存在は周りの者を惹きつけ、魅了していた。何か問題を起こすようなこともなく、静かに暮らしていたリキだったが、どこかいつも孤独だった。大勢の友に恵まれ楽しそうにしていても彼は孤独で、何かを探しているようだった。
 
ユピテルはリキの成長をずっと見ていたがその孤独さは日に日に大きくなる一方で、ついに事件は起きてしまった。
 
命の尽きる寸でのところで気付いたユピテルは已む無くガイを堕天使へと降格し地上へと落としたのだ。そうせざるを得ないほどの罪をガイは犯してしまったのだ。
 
リキの首を絞め今にも死にそうなリキの体から衣服を奪い、強姦した。リキの後ろに無理矢理性器を差し込み、大量の血を流し青ざめたリキのことなど気付く様子もなく興奮しているガイ。
 
今にも命を失いそうなリキに気付いたのはユピテルだった。たまたま監視していた映像にその様子が映し出され、ユピテルへと映像が転送されたことで発覚した強姦行為。それが行われる前にガイの行動には何度か感情の起伏に不審な点があり注意していたのだが、まさかその挙動不審さがリキへと向けられていたなどとは思いもしなかったのだ。
 
ここ数十年の間に楽園内では少しずつ天使たちのメンタルが変化しつつあった。それに伴い堕天使となっていった天使も増え続けている。
 
もしかするとそのメンタルの変化が、いずれは楽園の未来を左右してしまうのではないか、とユピテルは考えていた。異端のリキが生まれた時からそれは徐々に始まっている。
 
堕天使となった親を追い自らも堕天使となる者、その者を慕い追いかけるために堕天使になった者、そしてとうとうガイのような憎悪の感情で埋め尽くされて堕天使になってしまった者がいい例だ。
 
そして今回、リキは何の罪も犯していないのに堕天使となり、それを探しに行くのだ。自身の激流を手に入れるために過酷な道へと自ら向かうのだ。
 
不器用で可哀想なリキ。
 
そんなリキもユピテルの大切な子供の一人であり、愛する存在だ。ユピテルの愛は無限であり、無償であるがゆえに平等である。だからガイに対しても平等の愛を与えた。
 
堕天使として地上へと落とすことでガイの最大の愛は守られたのだ。リキを強姦し殺そうとした行為は許されるはずはなく、もし内部へバレることがあれば即処刑されてしまうほどの大罪だった。
 
しかしユピテルはそんなガイに対して憐みも感じていた。ガイの激流はリキだったから。リキ以外にきっとガイには現れないのだろうから、だからユピテルは緊急措置としてガイの記憶からリキに関する全ての情報を消して堕天使とすることにしたのだ。そうすることでガイは堕天使として短い寿命の中で罪の意識にとらわれることなく生きていけるのだから。それだけでも十分なはず。
 
ガイには禁忌を犯した罪という記憶だけを残していた。その禁忌がどういった内容なのかは曖昧にして堕天使にした。嘘の記憶を埋め込むことなどはしない。ただ許されない罪を犯したということだけをガイの記憶に残して。
 
そうして気が付けばいつの間にか堕天使のガイは魔族のガイへとなっていたのだ。記憶を消したはずなのに心の奥底に潜んでいた憎悪がガイを魔族へと変化させてしまった。だがユピテルにはもうどうすることもできない。魔族になってしまえばもう、ユピテルの子供ではなくなってしまうのだ。
 
今日もユピテルは優しい目で天使たちを見つめ、地上へと落ちた堕天使たちを観察し、見守っている。

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